Love Glows 〜Side.S〜





すべてはあの流れ星を見た時から――



隣のホールから勝利の余韻を楽しむべく、
たくさんの笑い声、歌声が音楽に乗って聴こえてくる。
一体どれだけの時間が流れたのだろうか・・・。
随分と長い時間、こうして立っている様な気がするけれど、
そんなに経ってないんだよな・・・。



さっき交わした何気ないキス。
流れ星を見つけた瞬間、ふと隣に居る彼女に目をやると、
彼女もそれに気づいたのか、にっこりと俺に微笑みかけてくれた。
そして、夜空に向けた人差し指・・・。
俺は何も迷うことなく彼女の手を引いていた。
きっと今まで誰にも見せた事のないような顔をしていたんだろうな。
彼女の・・・リノアの顔がとても嬉しそうだったから。



勢いであんなことをしてしまったけど、リノアは嫌がってなかっただろうか?
それでも、この胸のうちから湧き出る感情はどうにもならなかったんだ。
自分自身、どう制していいかわからない、何ともいえない不思議な気持ち。
アルティミシアを倒す前にそんなものを抱いていなかった、と言えば嘘になるが
正直それまではとても余裕がなかった。
俺も、リノアも、そして仲間たちも。



今、こうしてみんな無事に帰ってこれた。
平和を祝うことが出来た。
・・・平和?果たしてこれで終わりなんだろうか・・・?
未来の魔女は去っても、リノアが魔女である事実は変わらない。
これから先、きっと色々な問題が山積みになってくることだろう。
それは俺たちSeeDにとっても、彼女にとっても。
そして、俺自身も・・・。



魔女の騎士という肩書きだけで終わるはずもない。
俺は一人の人間として、魔女・リノアではなく、
リノアそのものを守ってやりたいんだ。
どれだけのことが出来るかわからない。
ましてや、俺たちの関係が今どんなものなのかもハッキリとは表せないのだから。
だからこそ、出来ることから一つずつ始めていけばいい。



・・・不思議だな。
こんなこと思うようになるなんて。
バルコニーに寄りかかりながら夜空を眺め、
一人の世界に入り込んでいると、
ふと隣からの視線に気がついた。
考えたら、さっきから一言も交わしてなかったな。
体、冷えてないだろうか?それとも・・・。
そう考えながら訊いてみる。



「・・・?どうした?」
「ううん、なんでもないよ。」
「そうか?」
「うん。」
「ならいいが・・・。気を悪くしたか?」



俺としては、精一杯正直な気持ちを言葉にしたつもりだったが、
その瞬間リノアに噴き出されてしまった。
何か変な事言ったか・・・?



「何だよ・・・いきなり・・・。」
「ごめんって〜。気を悪くするなんて、そんなことあるわけないじゃない。」
「なら、何で笑うんだよ?」
「ううん、何でもないの。スコールって、優しいね。」
「はぁ?」



やっぱりまだまだ彼女は理解不能だ。
それでも気を悪くしてはいない、ということらしいのは確か。
心の奥底で少し安堵感を覚える。
・・・何も難しいことじゃない。
沢山考えすぎたって、結局はいつだって何とかしてきた。
これからもその通りやっていけばいい。



ただ、一緒にいたいだけなんだ。
リノアの笑顔を見て、声を聴いて・・・。
その願いを流れ星に託そう。
その願いがいつまでも続くように。



でも、きっと、すべてはあの流れ星を見た時から――。





Fin



リノア視点>の逆バージョンです。



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