「昨日、全部揃ったんだ」
そう言った彼の目は、子供よりも子供らしく輝いていた。
何が?とは聞かないでおくことにした。
きっとまた、いつものだよね。

「とりあえず、おめでとう」
私がそう言うと、彼は体をこっちに向けてニコリと笑った。

「子供っぽいって思ってるだろ?」
「んー…年相応なんじゃない?」
本当はちょっとだけ思っていたけど、普段はすごく大人びて見えるから、これで帳尻が合う気がする。だから年相応。

「リノアもルール覚えればいいのに」
「えーっ?!無理無理!普通のルールならまだ分かるけど、プラスとかになるとちんぷんかんぷんだもの」
「頭の体操にはもってこいなんだけどな」
「うん、だから余計に無理。それに、負けてお気に入りを取られたらショックじゃない?」
例えば、スコールのカードとか…負けて取られたら立ち直れなくなっちゃう。

「まぁ、確かに。でも必ず取り返せばいいから」
「負けず嫌いだなぁ」
「それに、大事なのはなるべく使わないようにしてるし。ランダムだとそうもいかないけど」
「そうなの?ふーん。ねえ、一番苦戦したのは誰だった?」
「リノアの親父さん」
「え?お父さん?」

即答だったし意外だった。お父さんがカードをやっていたのは随分前から知っていたけど、そんなに強くないのかなって思っていたから。

「うん…やっぱり、リノアの親父さんが一番だな。カードって冷静じゃないと勝てないんだけど、あの時はなかなか冷静になれなかった」
「どうして?」

つい尋ねてしまったら、彼は一瞬、目を大きく見開いてから一つ瞬きして、私を抱き込んだ。
くっついたところから、トクトクと鼓動が聞こえてきて…当たり前なのに、彼が生きているって実感した。

「なぁ、知ってて訳を聞くのか?」
どうしてだろう、彼の鼓動が少しだけスピードを増した。

「え?本当に分からないんだけど」
本音だった。だって、スコールはキスティスよりも強いって聞いていたから。
お父さんがいつも負けてる相手が、キスティスだって知ったのは最近なんだけどね。(任務の合間に相手してくれてるみたい)

「大佐は策士だ。わざと俺が揺さぶられるような事を言ってきた」
「ふーん」
「自分の好きな子のカードを持ってるなんて言われたら、誰だって力むだろ?」
「うん、そうかもね……え?」
そこで私はようやく気付いた。
それって、私のカードが欲しくて動揺したってこと?!

確認しようとスコールの顔を見ようとしたけど、抱き込まれているからできない。でも、鼓動が如実にYESと答えてていて…。

(どうしよう。嬉しい、かも)
こんな事で?って思われるかもしれないけど、カードだとしても、私欲しさに奮闘してくれたのかと思うと、なんだかひどくドキドキした。

「さ、お喋りはおしまい」
「え?あっ…ちょっと…!」
急に、手の動きが子供ではないものに変化して、私の脈も跳ね上がる。

「だってまだ、し足りない…」
突然色っぽい台詞を口にしたスコールに、私はあっという間に翻弄され……いただかれてしまった。



End.



(2014.9.7 のえ様より)

いつもツイッターで親しくさせていただいているのえ様が5000ツイートを達成された際に
SSリクエストを受け付けておられたので図々しくもそれに乗っからせていただきました〜。
お題は「鼓動」、だったのですがとても私の想像の上を行く素晴らしさであっという間に
のえ様スコリノワールドに惹き込まれてしまいました〜!お忙しい中ステキなお話をありがとうございました!

他にものえ様の魅力ある作品がたくさんです。是非こちらよりどうぞ(^^)



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